1. モルタル外壁の0.3mmひび割れはなぜ危険なのか
2. 構造クラックとヘアークラックの決定的な違い
3. モルタル・コンクリート外壁特有のリスク
4. 茅ヶ崎の地震・台風リスクが構造クラックに与える影響
5. 放置すると建物はどうなる?段階的な被害進行
6. 構造クラックを見つけたらすぐにすべきこと
ご自宅のモルタル外壁に入ったひび割れを見つけて、これは大丈夫なのだろうかと心配になっていませんか。
※この記事は、モルタル・コンクリート外壁のお住まいを対象とした内容です。サイディング外壁の方は別の記事をご参照ください。
特に0.3mm以上のひび割れは、専門的には「構造クラック」と呼ばれ、建物の安全性に関わる重要なサインとされています。
モルタルやコンクリートは住宅の構造を支える大切な部分であり、内部に鉄筋が入っているため、ひび割れから雨水が浸入すると鉄筋の腐食につながる可能性があります。
茅ヶ崎のように相模湾に面した地域では、地震や台風といった自然災害のリスクも考慮する必要があります。
この記事では、モルタル・コンクリート外壁において、なぜ0.3mmという数値が重要な基準になっているのか、構造クラックが建物に与える影響、そして茅ヶ崎特有のリスク要因について、現場での経験を交えながらお伝えしていきます。
モルタル外壁の0.3mmひび割れはなぜ危険なのか
モルタルやコンクリート外壁にできるひび割れには様々な種類がありますが、国土交通省の基準では0.3mmという数値が一つの重要な境界線として設定されているようです。
この基準が設けられている理由には、建物の構造や耐久性に関わる科学的な根拠があります。
雨水浸入の臨界点
ひび割れの幅が0.3mm以上になると、雨水がコンクリート内部に浸入しやすくなることが分かっています。
表面的な細かいひび割れとは異なり、この幅を超えると水分が建物の奥深くまで到達する可能性が高まるとされています。
外壁材の表面だけでなく、下地のコンクリートや内部の鉄筋にまで水分が届いてしまうと、そこから様々な劣化が始まっていくことがあります。
茅ヶ崎のような海に近い地域では、潮風による塩分も含まれた雨水が浸入することで、腐食の進行がより早まる可能性も考えられます。
さらに、クラック内部に浸入した水分は、冬季の夜間や早朝に氷点下になると凍結して膨張します。
この凍結と融解が繰り返されることで、ひび割れがさらに広がっていくという悪循環が起こる可能性があります。
0.3mm未満のひび割れであれば水分の浸入量も限られますが、0.3mm以上になると凍結融解による被害拡大のリスクが高まるのです。
建物の構造体への影響
0.3mm以上のひび割れは、単なる表面の塗膜劣化ではなく、コンクリート本体が割れている状態を示していることが多いです。
建物の基礎や壁といった構造を支える部分にこのレベルのひび割れが発生している場合、建物全体の強度に関わってくる可能性があります。
コンクリート造の建物では、内部に鉄筋が配置されて強度を保っていますが、深いひび割れから水分が浸入すると、この鉄筋が錆びて膨張し、さらにコンクリートを破壊していくという悪循環が起こることがあります。
0.3mmという数値は、目で見ただけでは正確に判断しづらいものです。
ホームセンターで数百円程度で購入できるクラックスケールという測定器具を使うと、ひび割れの幅を正確に確認できます。
ただし、幅だけでなくひび割れの深さや発生場所も重要な判断材料になるため、気になる場合は専門業者に診てもらうことをお勧めします。
構造クラックとヘアークラックの決定的な違い
外壁のひび割れは大きく分けて「ヘアークラック」と「構造クラック」の二種類に分類されています。
この二つの違いを理解しておくことで、ご自宅のひび割れがどの程度の緊急性を持つものなのか判断する助けになるかもしれません。
ヘアークラック(0.3mm未満)

ヘアークラックは髪の毛のように細いひび割れで、幅が0.3mm未満、深さが4mm未満のものを指します。
主に外壁表面の塗膜が経年劣化で割れている状態で、建物の構造体そのものには直ちに影響を与えないことが多いとされています。
モルタルやコンクリートは乾燥する過程で収縮するという性質があり、この乾燥収縮によって表面に細かいひび割れが生じることは珍しくありません。
ヘアークラックの段階であれば、次回の外壁塗装のタイミングで対応を検討するという選択肢もあります。
ただし、ヘアークラックでも放置すると徐々に広がって構造クラックに発展する可能性はあるため、定期的な観察は必要です。
構造クラック(0.3mm以上)

構造クラックは幅0.3mm以上、深さ5mm以上のひび割れを指し、モルタルやコンクリートの下地や構造体にまで達している可能性が高い状態です。
建物の安全性や耐久性に直接影響を与える可能性があるため、早急な対応が推奨されています。
構造クラックが発生する原因としては、地震や地盤沈下による建物への負荷、施工時の問題、経年劣化による構造体の弱体化などが考えられます。
開口部(窓やドアの周辺)に斜めに走るひび割れや、基礎から壁全体に渡って伸びているひび割れは、特に注意が必要とされています。
構造クラックを放置すると、雨水の浸入による内部の腐食、鉄筋の錆による爆裂現象、耐震性の低下など、建物全体に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
モルタル・コンクリート外壁特有のリスク
モルタルやコンクリートは、他の外壁材とは異なる特性を持っており、それゆえの注意点があります。
これらの材料の性質を理解しておくことで、ひび割れのリスクをより深く認識できるかもしれません。
モルタル・コンクリートの宿命
モルタルやコンクリートは、水を使用した湿式工法で施工されます。
施工後の乾燥過程で水分が蒸発することで、材料が収縮してひび割れが発生しやすいという特性があります。
これは「乾燥クラック」と呼ばれ、ある程度は避けられない現象とも言われています。
0.3mm未満の細かいひび割れであれば、この乾燥収縮によるものである可能性が高く、構造体への影響は限定的かもしれません。
しかし、0.3mm以上の構造クラックは、単なる乾燥収縮だけでは説明できない、より深刻な原因が潜んでいる可能性があります。
鉄筋コンクリート構造のリスク
モルタルやコンクリートで作られた建物の基礎や壁には、強度を確保するために内部に鉄筋が配置されています。
この鉄筋は通常、コンクリートに包まれることで錆から守られていますが、構造クラックから水分が浸入すると状況が変わってきます。
鉄筋が錆びると元の体積の数倍に膨張する性質があり、この膨張圧力がコンクリートを内側から破壊していきます。
これが「爆裂現象」と呼ばれる状態で、外壁の表面が盛り上がったり、コンクリート片が剥がれ落ちたりする原因になります。
茅ヶ崎のような海に近い地域では、潮風に含まれる塩分が鉄筋の腐食を加速させる可能性も考えられます。
茅ヶ崎の地震・台風リスクが構造クラックに与える影響
茅ヶ崎は相模湾に面した穏やかな気候の地域として知られていますが、自然災害のリスクについても理解しておくことは大切です。
地域特有の条件が、建物の外壁に発生した構造クラックにどのような影響を与える可能性があるのか見ていきましょう。
地震による影響
神奈川県では相模トラフ沿いの海溝型地震や、元禄関東地震タイプの地震など、複数の地震リスクが想定されています。
茅ヶ崎市でも津波ハザードマップや防災マップが整備されており、地震への備えが重要視されている地域です。
すでに構造クラックが発生している建物に地震の揺れが加わると、ひび割れがさらに拡大したり、新たなクラックが発生したりする可能性があります。
建物の構造体が弱まっている状態で大きな地震に見舞われた場合、最悪のケースでは建物の倒壊リスクも否定できません。
地震大国である日本、特に相模湾沿いの地域では、構造クラックを早めに発見して適切に補修しておくことが、将来の地震に対する備えの一つになるかもしれません。
台風・強風の影響
海沿いの茅ヶ崎では、台風シーズンになると強風と激しい雨に見舞われることがあります。
構造クラックが発生している外壁に、横殴りの雨が当たり続けることで、通常以上の速さで水分が建物内部に浸入していく可能性が考えられます。
また、強風による建物の揺れや振動が繰り返されることで、既存のクラックが少しずつ広がっていくこともあります。
海風に含まれる塩分は、鉄筋の腐食を促進する要因にもなるため、海に近い立地では特に注意が必要です。
茅ヶ崎市では、地震による津波や河川津波、同時多発火災、洪水など複数の災害リスクが想定されています。
構造クラックがある建物は、これらの災害時により大きなダメージを受ける可能性があります。
日頃から建物の状態を把握し、必要に応じて専門家に相談しておくことが、家族の安全を守ることにつながるかもしれません。
海沿い特有の環境要因
相模湾に面した茅ヶ崎では、潮風による塩害も考慮すべき要因の一つです。
塩分を含んだ空気は、構造クラックから建物内部に入り込むと、鉄筋やその他の金属部分の腐食を早める可能性があります。
内陸部の住宅と比べて、海沿いの建物は外壁の劣化スピードが速いことが多いと言われています。
定期的な点検とメンテナンスが、建物を長持ちさせる上でより重要になってくる環境かもしれません。
放置すると建物はどうなる?段階的な被害進行
構造クラックを放置した場合、建物にはどのような変化が起こる可能性があるのでしょうか。
被害の進行過程を段階的に見ていくことで、早期対応の重要性が理解できるかもしれません。
第一段階:雨水の浸入開始
構造クラックが発生した直後は、まず雨水が外壁内部に浸入し始めます。
最初は少量の水分でも、雨が降るたびに徐々に内部へと染み込んでいくことになります。
この段階では目に見える変化は少ないかもしれませんが、壁の中では確実に水分が蓄積されていっている可能性があります。
特に梅雨や台風シーズンには、大量の雨水が繰り返し浸入することで、内部の湿度が高まっていきます。
第二段階:鉄筋の錆と腐食
浸入した水分がコンクリート内部の鉄筋に到達すると、鉄筋に錆が発生し始めます。
鉄筋は錆びると元の体積の数倍に膨張する性質があり、この膨張圧力がコンクリートを内側から押し広げていきます。
鉄筋の腐食が進行すると、建物の構造強度が低下していきます。
また、錆によって膨張した鉄筋は周囲のコンクリートにひび割れや剥離を引き起こし、被害範囲が拡大していくことがあります。
第三段階:構造体の破壊と爆裂現象
鉄筋の錆による膨張が限界に達すると、コンクリートが内部から破壊される「爆裂現象」が起こることがあります。
外壁の表面が盛り上がってきたり、コンクリート片が剥がれ落ちてきたりする状態です。
この段階まで進行すると、建物の構造体そのものが深刻なダメージを受けている可能性が高くなります。
補修も大規模なものが必要になり、費用も時間も初期段階の対応と比べて大きく増加してしまうことが多いです。
最終段階:建物全体の安全性低下
構造体の破壊が広範囲に及ぶと、建物全体の耐震性や耐久性が著しく低下します。
地震や台風などの外力に対する抵抗力が弱まり、災害時に大きな被害を受けるリスクが高まります。
最悪の場合、建物の傾きや沈下、部分的な崩壊といった深刻な事態に至る可能性もあります。
ここまで被害が進行してしまうと、部分的な補修では対応できず、大規模な改修工事や建て替えを検討しなければならないケースもあります。
構造クラックによる被害の進行速度は、建物の状態や環境条件によって大きく異なります。
数年で深刻な状態に至る場合もあれば、比較的ゆっくりと進行する場合もあります。
しかし、一度始まった劣化を自然に止めることはできないため、早期発見と適切な対応が建物を守る最善の方法と言えるでしょう。
構造クラックを見つけたらすぐにすべきこと
もしご自宅の外壁に0.3mm以上と思われるひび割れを発見した場合、どのように対応すればよいのでしょうか。
焦る必要はありませんが、適切な手順で確認と対策を進めていくことが大切です。
まずは状態の確認と記録
ひび割れを発見したら、まずその状態を記録しておくことをお勧めします。
写真を撮影する際には、全体の様子と、ひび割れ部分のクローズアップの両方を撮っておくと、後で専門業者に相談する際に役立ちます。
可能であれば、クラックスケールを使って幅を測定してみてください。
発見した日付と、ひび割れの場所、長さ、方向なども記録しておくと、その後の変化を追跡しやすくなります。
複数のひび割れがある場合は、それぞれの位置関係も把握しておくと良いでしょう。
特に窓やドアの周辺、建物の角部分に発生しているひび割れは、構造的な問題を示している可能性があるため注意が必要です。
専門業者による診断
0.3mm以上のひび割れを発見した場合、できるだけ早く専門業者に診断を依頼することをお勧めします。
外壁塗装や建物診断の専門家は、ひび割れの原因や深刻度を適切に判断できる知識と経験を持っています。
診断では、ひび割れの幅と深さだけでなく、発生原因、建物全体の状態、補修の必要性と方法などを総合的に評価してもらえます。
複数の業者に診断を依頼して意見を聞き比べることも、適切な判断をする上で有効な方法かもしれません。
診断の結果、すぐに補修が必要という判断になった場合でも、業者によって提案される工法や費用は異なることがあります。
説明をよく聞いて、納得できる対応を選択することが大切です。
主な補修方法について
構造クラックの補修方法には、ひび割れの状態に応じていくつかの工法があります。
比較的軽度の構造クラック(0.3mm〜1.0mm程度)には、エポキシ樹脂注入工法が用いられることがあります。
ひび割れ内部に専用の樹脂を注入して固めることで、強度を回復させる方法です。
幅が広いひび割れ(1.0mm以上)には、Uカット工法やVカット工法と呼ばれる方法が採用されることがあります。
ひび割れに沿ってU字型やV字型に溝を掘り、そこにシーリング材やモルタルを充填する工法です。
補修後は、防水性を高めるために外壁塗装を行うことも推奨されています。
適切な補修と塗装によって、再びひび割れが発生しにくい状態を作ることができます。
費用の目安
構造クラックの補修費用は、ひび割れの規模や補修方法によって変わってきます。
一般的には、補修工事だけで数万円から十数万円程度、外壁塗装も含めた全体工事では数十万円から百万円以上になることもあります。
また、台風や地震による被害の場合、加入している火災保険が適用される可能性もあります。
保険会社に問い合わせて、補償の対象になるかどうか確認してみると良いでしょう。
モルタル・コンクリート外壁のひび割れは、早めに発見して適切に対応することで、建物を長持ちさせることができます。
0.3mm以上の構造クラックを見つけた場合は、それが建物からの重要なメッセージだと捉えて、専門家に相談してみることをお勧めします。
茅ヶ崎のように地震や台風のリスクがある地域では、建物の状態を定期的にチェックしておくことが、家族の安全と財産を守ることにつながります。
不安に感じることがあれば、一度専門業者に診てもらうことで安心が得られるかもしれません。
※今回はモルタル・コンクリート外壁の構造クラックについてお伝えしました。サイディング外壁のひび割れや劣化については、別の記事で詳しく解説していますので、そちらもご参照ください。
茅ヶ崎でのモルタル・コンクリート外壁の診断や構造クラックの補修は、ハーモニーホームにご相談ください。
