お住まいの外壁がALCで、目地部分のひび割れや黒ずみが気になり始めた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ALCはとても優れた外壁材ですが、目地のシーリングが劣化すると雨漏りにつながる可能性があるため、適切な時期でのメンテナンスが欠かせません。
この記事では、ALC外壁のシーリング施工方法や推奨されるシーリング材について、現場での経験をもとにお伝えしていきます。
1. ALC外壁でシーリングが重要な理由
2. ALC外壁に適したシーリング材の種類
3. シーリングの施工方法と基本的な流れ
4. 打ち替えと増し打ち、どちらを選ぶべき?
5. 長持ちさせるメンテナンスのポイント
ALC外壁でシーリングが重要な理由
ALC(軽量気泡コンクリート)は断熱性や耐火性に優れた外壁材ですが、内部に無数の気泡を含むため吸水性が高いという特性があります。
そのため、パネル同士の継ぎ目である目地部分のシーリングが防水の要となります。
ALCパネルは1枚あたりのサイズが比較的小さいため、窯業系サイディングなどと比べて目地の数が多くなる傾向があります。
この目地がすべて防水のポイントになるわけですから、シーリングの状態管理がとても大切になってきます。
二次防水がない構造に注意
重量鉄骨造のALC建物の場合、サイディング住宅のような防水シート(二次防水)が内側にないケースが多いです。
つまり、目地のシーリングと塗装だけで雨水の浸入を防いでいる構造になっています。
この点を理解しておくと、シーリングのメンテナンスがいかに重要かがわかるかと思います。
シーリングが劣化して雨水が浸入すると、ALC内部の鉄筋が錆びてしまい、建物の強度に影響を与える可能性もあります。
ALC外壁に適したシーリング材の種類
ALC外壁のシーリング補修で使用される材料には、いくつかの種類があります。
それぞれに特徴があるため、塗装との組み合わせや建物の状況によって使い分けることになります。
ウレタン系シーリング材
塗装を前提としたALC外壁の補修では、ウレタン系シーリング材が多く使われます。
塗料との密着性が良く、硬化後は弾力性に富むため、建物の動きにも追従しやすい特徴があります。
ただし、紫外線に弱いため、シーリングの上から必ず塗装で保護する必要があります。
塗り替え工事と同時に施工する場合には、適した選択肢といえるでしょう。
変成シリコン系シーリング材
変成シリコン系は、ウレタン系と比べて耐候性に優れています。
塗装しない場合でも使用できますが、一般的には塗り替え工事の際に使われることが多いです。
シリコン系と名前が似ていますが、原料はウレタン樹脂系で全く別物です。
純粋なシリコン系シーリング材は塗装ができないため、外壁には使用しないよう注意が必要です。
ALC外壁に推奨されるシーリング材
ALC外壁のシーリング補修では、オートンサイディングシーラントが推奨されています。
なぜこの製品が推奨されるかというと、ALCという素材の特性に理由があります。
ALCは軽量気泡コンクリートという名前の通り、内部に気泡を含んだ比較的もろい素材です。
引張強度が強すぎるシーリング材を使用すると、建物が動いた際にシーリングに引っ張られてALCパネル自体が破損してしまう可能性があるのです。
近年、耐用年数20〜30年をうたう高耐久シーリング材も登場していますが、これらは引張強度が高い傾向にあります。
ALC外壁には不向きなケースが多いため、材料選定は慎重に行う必要があります。
オートンサイディングシーラントは、ノンブリードタイプで塗装との相性も良く、ALCの特性に合った設計になっています。
シーリングの施工方法と基本的な流れ
ALC外壁のシーリング施工は、建物の防水性能を左右する重要な工程です。
ここでは、塗り替え時のシーリング補修の基本的な流れをご紹介します。
シーリング補修の施工手順
打ち替えの場合、まず既存のシーリングをカッター等で撤去していきます。
このとき、ALCパネル自体を削ってしまわないよう注意が必要です。
①既存シーリングの状態確認・撤去(打ち替えの場合)
②目地まわりの清掃と養生テープ貼り
③プライマー(下塗り剤)の塗布
④シーリング材の充填
⑤ヘラで押さえて仕上げ
⑥養生テープの撤去
プライマー塗布の重要性
ALCは多孔質で液体を吸収しやすい材料です。
プライマーを塗布せずにシーリングを打つと、接着面から剥離を起こしやすくなります。
プライマーはシーリング材に適合したものを選び、目地の断面にたっぷりと塗布することが大切です。
この工程を丁寧に行うかどうかで、シーリングの持ちが変わってくることもあります。
肉厚に充填することがポイント
ALCのシーリング施工では、シーリング材を肉厚に充填することが重要です。
充填量が不十分だと、紫外線や雨水の影響で早く劣化してしまい、肉痩せやひび割れの原因になります。
特にサッシまわりや開口部は、構造上目地幅が広くなっていることが多いため、たっぷりとシーリングを充填する必要があります。
開口部からの雨漏りは比較的多いので、この部分は特に丁寧な施工が求められます。
打ち替えと増し打ち、どちらを選ぶべき?
ALC外壁のシーリング補修には、「打ち替え」と「増し打ち」の2つの方法があります。
建物の状況やシーリングの劣化状態によって、適切な方法を選ぶ必要があります。
打ち替えが基本
打ち替えは、既存のシーリングをすべて撤去してから新しいシーリングを充填する方法です。
撤去の手間がかかる分、費用は増し打ちよりも高くなりますが、シーリングの厚みを確保でき、より確実な補修ができます。
劣化が進んでいる場合は、打ち替えで対応するのが安心です。
ひび割れや肉痩せが見られるシーリングの上から増し打ちしても、十分な性能が発揮できないことがあります。
増し打ちが適するケース
増し打ちは、既存のシーリングの上に新しいシーリングを追加する方法です。
既存シーリングの劣化が軽度で、まだ弾力性が残っている場合には有効な選択肢となります。
ALCパネルは厚みがあり、パネル同士が突き合わせでジョイントしている構造が多いです。
そのため、シーリングにひび割れがあっても即座に雨漏りになるケースは少ないといわれていますが、だからといって放置してよいわけではありません。
Vカット工法という選択肢
既存シーリングの完全撤去が難しい場合には、「Vカット工法」が用いられることもあります。
古いシーリングの表面をV字型に削り取ってから増し打ちすることで、新しいシーリングの厚みを確保する方法です。
入隅部分など構造的に撤去が難しい箇所では、この方法が適していることもあります。
打ち替え:13万円〜程度から
増し打ち:10万円〜程度から
※建物の大きさや状況、使用する材料によって変動します
長持ちさせるメンテナンスのポイント
ALC外壁のシーリングを長持ちさせるためには、定期的な点検と適切なタイミングでの補修が大切です。
劣化サインの見分け方

シーリングの劣化は、以下のような症状として現れます。
表面のひび割れ:細かいひびが入っている状態
肉痩せ:シーリングが痩せて凹んでいる状態
硬化:押しても弾力がなく硬くなっている状態
剥離:端部がめくれて隙間ができている状態
変色・黒ずみ:ブリード現象による汚れ
これらの症状が見られたら、外壁塗装のタイミングに合わせて補修を検討されることをおすすめします。
外壁塗装と同時施工のメリット
シーリング補修は外壁塗装と同時に行うのが一般的です。
足場を一度で済ませられるため、トータルのコストを抑えられます。
また、シーリング施工後に塗装することで、シーリング表面が塗膜で保護されます。
紫外線による劣化を軽減できるため、シーリングの寿命を延ばす効果も期待できます。
専門業者への相談
ALC外壁は窯業系サイディングやモルタルに比べると施工事例が少ないため、経験の少ない業者もいるかもしれません。
見積もりを依頼する際には、ALCの施工経験があるか、どのようなシーリング材を使用するかを確認してみるとよいでしょう。
茅ヶ崎のような沿岸部では、塩害の影響も考慮したメンテナンス計画が必要になることもあります。
気になる症状がある場合は、まずは専門業者に相談してみることをおすすめします。
まとめ
ALC外壁のシーリングは、建物の防水性能を維持するために欠かせない存在です。
適切なシーリング材を選び、正しい施工方法で補修することで、大切なお住まいを長く守ることができます。
ALC外壁には、引張強度が強すぎないオートンサイディングシーラントが推奨されています。
ALCは比較的もろい素材のため、高耐久だからといって引張強度の高いシーリング材を使うとパネルを傷める可能性があるからです。
劣化が進んでいる場合は打ち替え、軽度であれば増し打ちと、状況に応じた判断が必要になります。
ご自宅のALC外壁が気になる方は、一度専門業者に点検を依頼してみてはいかがでしょうか。
茅ヶ崎でのALC外壁シーリング補修のご相談は、ハーモニーホームまでお気軽にどうぞ。
